【2024年9月4日更新】

このページでは、海外に在住しておられた方が亡くなられた際の遺族年金請求手続きについて紹介しております。海外での受給の特例の前に、日本の遺族年金の基本事項をご確認いただいてから、海外での日本の遺族年金の受給についてのページをご覧下さい。

海外に在住される方が、日本に居住しておられたご親族の遺族年金などをご請求される場合は通常日本で行われている遺族年金請求になります。

松田社会保険労務士事務所ではあらゆる年金手続きについて代行・サポートをおこなっております。日本でお住まいの方の年金受給のサポートに不自由を感じておられる等お困りのことがあればお気軽にお問合せください。

日本年金における遺族年金の概要をふまえ、海外在住の方々が居住国で日本の遺族年金を受給される際、日本で受給される場合と相違する部分を以下でご紹介いたします。

海外在住者が遺族年金を請求するために

 基本的な受給要件は同じです。日本の被保険者期間(合算対象期間)等のみでは支給要件を満たさない場合に限り、相手国を通算します。

 通算の対象となる遺族給付は遺族基礎年金、遺族厚生年金と特例遺族年金です。 

 日本年金制度の例外として、相手国年金制度加入中に初診日又は死亡日がある場合であっても、日本年金制度加入中の保険事故とみなして日本年金制度の障害給付又は遺族給付を支給することとなっています。ただし、過去に、日本の年金制度の加入歴(納付や免除)があることが条件となっています。

相手国期間中に死亡した者の支給要件の特例

  •  遺族給付には、死亡日時点で日本の年金制度に加入していなければならないとういう要件がありますが、相手国期間中に死亡日がある場合も遺族年金が支給されます。
  • 相手国期間中に初診日がある傷病により、当該初診日から起算して5年経過前に死亡した場合は、厚生年金保険の被保険者期間中に初診日のある傷病により、当該初診日から5年経過前に死亡したものとみなし、遺族給付が支給されます。
  • 通算の対象となる保険期間は国により異なります。詳細は「各国との期間通算」のページをご確認ください。

アメリカの場合

 米国に居住されている場合、日米協定に基づき日本の障害・遺族年金を受けるためには、「障害の初診日もしくは死亡日などの直前2年間のうち1年分のアメリカの年金加入期間があること」という条件もあります。 

※ アメリカの年金制度では、暦年における実際の就労月とクレジットは関連性がないため、次の条件を満たした場合にのみ日本の年金制度に加入していたものとみなすこととしています(障害年金又は遺族年金)。

①初診日(死亡日)が属する暦四半期までの8暦四半期中に、少なくとも4四半期分のクレジットが付与されていること。(8分の4要件)

②初診日(死亡日)が属する暦四半期までの13暦四半期中に、少なくとも6四半期分のクレジットが付与されていること。(13分の6要件) 

フランスの場合(初診日又は死亡日がフランス期間にある場合に日本期間とみなす場合の条件)

 フランスは年金加入記録が四半期ごとに管理されており、初診日又は死亡日の属する暦年において最低1加入四半期のフランス保険期間を有している場合に日本の年金制度に加入していたものとみなします。

遺族基礎年金の納付要件(2/3要件)

  日本の保険料納付済・免除期間だけでは納付要件(2/3要件)を満たさない場合には、相手国期間を国民年金の保険料納付済期間とみなします。

例) 日本の保険料納付済・免除期間が130月、未納期間が110月、相手国期間が120月の場合。

① 通算前

     130/(110月+130月) < 2/3 となり不支給

② 通算後 

     (130月+120月)/(110月+120月+130月) ≧ 2/3 となり支給される。

※「2/3要件」:保険料納付済期間と保険料免除期間の合算が全被保険者期間の3分の2以上あること。

遺族基礎年金額の計算の特例

 通算による遺族基礎年金の額は、国民年金法第38条又は第39条の2第1項に規定する年金額に、按分率を乗じて計算します。

 按分率は国によって異なります。

⑴遺族基礎年金の按分率(理論的加入期間に基づく按分率)

 次の①の月数を①②(②の月数がゼロの場合は①③)の合計月数で除して計算します。

 ①死亡者の保険料納付済期間と保険料免除期間の合計

 ②昭和36年4月1日から死亡日の翌日が属する月の前月までの期間(①に該当する期間、20歳到達日が属する月の前月までの期間、60歳到達月が属する月以後の期間は除く)

 ③死亡者の相手国期間

※インド、アメリカ、ブラジル、カナダ、フィリピン、

⑵遺族基礎年金の按分率(被保険者期間と相手国期間の合算期間に基づく按分率)

⑴①の月数を、⑴①③の合計月数で除して計算します。

・特例による遺族基礎年金への加算額も同様の按分率で計算します。

・特例による遺族基礎年金の受給により、被用者年金各法による中高齢寡婦加算等が停止されるが、特例による遺族基礎年金の額が中高齢寡婦加算の額より低い場合は、中高齢寡婦加算等に相当する額が加算されます。

※ドイツ、、ベルギー、フランス、オランダ、チェコ、ルクセンブルク、スロバキア、フィンランド、スウェーデン、アイルランド、スイス、スペイン、ハンガリー、

通算による遺族厚生年金額の計算の特例

 通算による遺族厚生年金(短期要件)の額は、厚生年金保険法で規定する年金額に、按分率を乗じて計算します。

 ただし、厚生年金保険の被保険者月数が300月を超える場合、按分率は適用しません。

 按分率は国によって異なります。

1⃣遺族厚生年金の按分率(理論的加入期間に基づく按分率)

 次の①の月数を①②(②の月数がゼロの場合は①③)の合計月数で除して計算します。

①死亡者が被用者年金被保険者等だった期間の合計

②昭和36年4月1日から死亡日の翌日が属する月の前月までの期間(①に該当する期間、20歳到達日が属する月の前月までの期間、60歳到達日が属する月以後の期間は除く)

③死亡者の相手国期間

※ インド、アメリカ、ブラジル、カナダ、フィリピン、

2⃣遺族厚生年金の按分率(死亡者が被用者年金被保険者等だった期間と相手国期間の合計期間に基づく按分率)

1⃣①の月数を、1⃣①③の合計月数で除して計算します。

※フランス、スペイン、ハンガリー、ベルギー、オランダ、チェコ、ルクセンブルク、スロバキア、フィンランド、スウェーデン、アイルランド、スイス、

3⃣遺族厚生年金の按分率(修正した按分率により給付の額を計算する場合)

 次の①②の合計月数を300で除して計算します。

① 死亡者の被用者年金被保険者等だった期間の合計

② 300から①を控除した月数に、①を①と相手国期間の月数との合計月数で除して得た率を乗じた月数

例)被用者年金被保険者期間が100月、相手国期間が150月の場合の按分率

① ・・・ 100

② ・・・ (300ー100)×100/(100+150)=80

按分率 ・・・ (100+80)/300=0.6

※ドイツ、

遺族厚生年金に加算する中高齢寡婦加算又は経過的寡婦加算の額

 通算による遺族厚生年金に加算される中高齢寡婦加算又は経過的寡婦加算の額は、定額に按分率を乗じて計算します。

 按分率は国によって異なります。

⓵遺族厚生年金に加算する中高齢寡婦加算又は経過的寡婦加算の按分率(理論的加入期間に基づく按分率)

次の①の月数を①②(②の月数がゼロの場合は①③)の合計月数で除して計算します。

① 死亡者が被用者年金被保険者等だった期間の合計

② 昭和36年4月1日から死亡日の翌日が属する月の前月までの期間(①に該当する期間、20歳到達日が属する月の前月までの期間、60歳到達日が属する月以後の期間は除く)

③ 死亡者の相手国期間

※ インド、アメリカ、ブラジル、カナダ、フィリピン、

⓶遺族厚生年金に加算する中高齢寡婦加算又は経過的寡婦加算の按分率(⓵に該当しない場合)

 中高齢寡婦加算又は経過的寡婦加算に係る、次の場合の按分率は、⓵①の月数を⓵①③の合計月数で除して計算します。

・死亡者が被用者年金被保険者等だった期間と相手国期間の合計期間に基づく按分率

・修正した按分率

※ドイツ、フランス、スペイン、ハンガリー、ベルギー、オランダ、チェコ、ルクセンブルク、スロバキア、フィンランド、スウェーデン、アイルランド、スイス、

遺族厚生年金(長期要件)に加算される中高齢寡婦加算又は経過的寡婦加算の額

 通算による遺族厚生年金(長期要件)に加算される中高齢寡婦加算又は経過的寡婦加算の額は、厚生年金法で規定する額に、期間比率を乗じて計算します。

≪期間比率≫

  • 死亡者の厚生年金保険被保険者期間の月数を、加算の資格要件期間の月数で除して計算します。
  • 例えば厚生年金被保険者期間が180月の場合、180月/240月(加算の資格要件期間)=0.75が期間比率となります。

発効日前に死亡した場合の遺族基礎年金の支給に係る特例

 相手国保険期間及び日本の国民年金の保険料納付済期間又は免除期間を有する者が、協定発効日前に死亡していた場合は、死亡日に次のいずれかに該当し、かつ保険料納付要件を満たしていれば、死亡者の妻又は子に遺族基礎年金が支給されます。

  • 国民年金の被保険者
  • 国民年金の被保険者だった者で、日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の者
  • 国民年金の被保険者だった者で、死亡日が相手国期間中の者
  • 受給資格期間が25年以上ある者

※この場合の遺族基礎年金は、死亡日ではなく、協定発効日が属する月の翌月から支給されます。

発効日前に死亡した場合の遺族厚生年金の支給に係る特例

① 相手国期間を有する厚生年金保険の被保険者又は被保険者だった者が、協定の発効日前に死亡した場合は、死亡日に次のいずれかに該当し、かつ保険料納付要件を満たしていれば、死亡者の遺族に遺族厚生年金が支給されます。

  • 厚生年金保険の被保険者
  • 厚生年金保険の被保険者だった者で、死亡日が相手国期間中の者
  • 厚生年金保険の被保険者だった者で、厚生年金保険被保険者期間、又は相手国期間中に初診日がある傷病により、当該初診日から5年以内に死亡した者

②これらに該当することで、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算・遺族基礎年金相当額の加算がされる場合があります。

※この場合の遺族厚生年金は、死亡日ではなく、協定発効日が属する月の翌月から支給されます。

複数種別の被保険者期間を有する者の遺族厚生年金

 相手国期間中に初診日のある傷病により当該初診日から起算して5年以内に死亡した者、又は相手国期間中に死亡した者が、複数種別の被保険者期間を有している場合、遺族厚生年金の事務を行う実施機関は次の通りとなります。

① 死亡日が被保険者期間中 ・・・ その制度の実施機関

② ①以外 ・・・ 死亡日前の直近の制度の実施機関

支払の遡及

 受給権発生から5年経過後に請求された場合は、受給権(基本権)は認められるが、遡及して支払われる年金は5年分となります。ただし、記録訂正に伴う時効特例法の適用、事務処理誤りや記録訂正により時効が援用されない場合もあります。