【2024年8月14日更新】
通算の対象となる給付は、障害基礎年金と障害厚生年金・障害手当金です。日本の被保険者期間等のみでは支給要件を満たさない場合に限り、相手国期間を通算します。
障害年金には、初診日において、日本の年金制度に加入していなければならないという要件がありますが、初診日が協定相手国期間中にある場合には、当該初診日において、日本の年金制度に加入していたものとみなされます。
障害給付には、初診日時点で日本の年金制度に加入していなければならないという要件がありますが、初診日が相手国期間中にある場合も、その時点で日本の年金制度に加入していたものとみなします。相手国保険期間中に初診日のある傷病による障害を有する者で、その障害にかかる障害認定日において、国民年金の保険料納付済期間または保険料免除期間を有する者は、初診日において国民年金の被保険者とみなされ、また障害認定日において厚生年金保険の被保険者期間を有する者については、初診日において厚生年金保険の被保険者であったものとみなされます。
日本の保険料納付済期間だけでは納付要件を満たさない場合には、相手国保険期間を国民年金の保険料納付済期間とみなします。ただし、障害給付の相手国期間を参入できない協定(ハンガリー、オーストラリア、イギリス、韓国、中国、イタリア)もあります。また、障害年金には参入できても障害手当金には参入できない国(ドイツ、アメリカ、カナダ)もあります。
相手国保険期間を国民年金の保険料納付済期間と見なす場合、アメリカの加入期間など暦年における実際の就労月と関連性を有しない場合は、一定の要件を満たす場合に日本の年金制度に加入していたものとみなすこととしており、協定国に応じた特例があります。
〇アメリカの例
次の条件を満たした場合のみ、日本の年金制度に加入していたものとみなします。
a.初診日が属する歴四半期までの8歴四半期中に、少なくとも4四半期分のクレジットが付与されていること(4/8要件)。
b.初診日が属する歴四半期までの13歴四半期中に、少なくとも6四半期分のクレジットが付与されていること(6/13要件)。
~アメリカのクレジットの考え方~
日米社会保障協定に規定する合衆国保険期間(クレジット)とは、収入に応じて付与される単位となります。1暦年の収入(2019年は1,360ドル)に対して1クレジットが付与されます。ただし、1暦年4クレジットが限度となります。なお、クレジットの期間は、実際の就労月とは関連性がなく、日本の保険期間とはその性格が異なります。
ア.アメリカのある暦年の1クレジット(2019年は1,360ドルに対して1クレジット)は、日本の当該暦年の「3カ月」の年金加入期間と同等の期間として換算します。
イ.クレジットの算入に際しては、日本の保険期間とは重複しない期間に換算された合衆国保険期間を算入します。
ウ.クレジットの算入に際しては、原則として、ある暦年の始まりから算入しますが、年金受給権の獲得のために必要がある場合は、個々の給付ごとに、暦年の終わりから順に算入していきます。
障害年金の納付要件(2/3要件)
日本の保険料納付済・免除期間だけでは納付要件(2/3要件)を満たさない場合には、相手国期間を国民年金の保険料納付済期間とみなします。
例)日本の保険料納付済・免除期間が130月、未納期間が110月、相手国期間が120月の場合。
①通算前
130月/(110月+130月)<2/3 となり不支給
②通算後
(130月+120月)/(110月+120月+130月)≧2/3
※「2/3要件」・・・保険料納付済期間と保険料免除期間の合算が全被保険者期間の3分の2以上あること。
注意) 障害基礎年金・障害厚生年金・障害手当金の保険料納付要件を審査する場合、障害認定日時点で国民年金の保険料納付済・免除期間、厚生年金保険の被保険者期間がいずれも0月の場合は対象外とされます。
協定により協定相手国の年金加入期間を通算することによって受給資格要件を満たした年金給付については、日本の年金制度で保険料を納付した実績に応じた額が支給されます。
通算による障害基礎年金の額の計算の特例
通算による障害基礎年金の額は、国民年金法33条に規定する年金額に、按分率を乗じて計算します。
⑴障害基礎年金の按分率(理論的加入期間に基づく按分率)
次の①の月数を①②(②の月数がゼロの場合は①③)の合計月数で除して計算します。
① 受給権者の保険料納付済期間と保険料免除期間の合計
② 昭和36年4月1日以後の期間(①に該当する期間、20歳到達日が属する月の前月までの期間、60歳到達日が属する月以後の期間、障害給付の障害認定日の属する月後の期間は除く。)
③ 相手国期間
※アメリカ、ブラジル、カナダ、インド、フィリピン
⑵障害基礎年金の按分率(被保険者期間と相手国期間の合算対象期間に基づく按分率)
① ⑴①の月数を⑴①③の合計月数で除して計算します。
② 特例による障害基礎年金への加算額も同様に計算します。
③併合認定により新たな障害基礎年金を受給する場合。
- 従前より低額の場合は、従前の額が支給されます。
- 新たな障害基礎年金に加算する額についても同様に、従前より定額の場合は、従前の額が支給されます。
- 障害年金の加算額は、加算対象となる子の死亡等による減少に応じて改定されるが、この場合も同様に、従前の加算額を子の数に応じて計算した額より低額の場合は、従前の額が支給されます。
※フランス、スペイン、ドイツ、ベルギー、オランダ、チェコ、アイルランド、スイス、ルクセンブルク、スロバキア、
通算による障害厚生年金の額の計算の特例
通算による障害厚生年金の額は、厚生年金保険法第50条に規定する年金額に按分率を乗じて計算します。ただし、厚生年金保険の被保険者月数が、300月を超える場合、按分率は適用しません。按分率は相手国によって異なります。
1⃣障害厚生年金の按分率(理論的加入期間に基づく按分率)
次の①の月数を①②(②の月数がゼロの場合は①③)の合計月数(300月を超える場合は300月)で除して計算します。
①受給権者の保険料」納付済期間と保険料免除期間の合計
②昭和36年4月1日以後の期間(①に該当する期間、20歳到達日が属する月の前月までの期間、60歳到達日が属する月以後の期間、障害給付の障害認定日の属する月後の期間は除きます。)
③相手国期間
※アメリカ、ブラジル、カナダ、
2⃣障害厚生年金の按分率(被保険者期間と相手国期間の合算期間に基づく按分率)
1⃣①の月数を、1⃣①③の合計月数(300月を超える場合は300月)で除して計算します。
※フランス、スペイン、
3⃣障害厚生年金の按分率(修正した按分率により給付の額を計算する場合)
次の①②の合計月数を300で除して計算します。
①被用者年金被保険者等だった期間の合計
②300から①を控除した月数に、①を①と相手国期間の月数との合計月数で除して得た率を乗じて得た月数
例)被用者年金被保険者期間が100月、相手国期間が150月の場合の按分率
①・・・100
②・・・(300ー100)×100/(100+150)=80
按分率・・・(100+80)/300=0.6
※ドイツ、
障害厚生年金(3級該当)の最低保障額の特例
特例による障害厚生年金(3級該当)の最低保障額は、厚生年金保険法第50条第3項で規定する年金額に、按分率を乗じて計算する。
⓵障害厚生年金(3級該当)の最低保障額(理論的加入期間に基づく按分率)
次の①の月数を①②(②の月数がゼロの場合は①③)の合計月数で除して計算します。
①受給権者の保険料納付済期間と保険料免除期間の合計
②昭和36年4月1日以後の期間(①に該当する期間、20歳到達日が属する月の前月までの期間、60歳到達日が属する月以後の期間、障害給付の障害認定日の属する月後の期間を除く)
③相手国期間
※アメリカ、ブラジル、カナダ、
⓶障害厚生年金(3級該当)の最低保障額(⓵に該当しない場合)
障害厚生年金(3級該当)の最低保障額に係る、次の場合の按分率は、⓵①の月数を⓵①③の合計月数で除して計算する。
- 被保険者期間と相手国期間との合計期間に基づく按分率
- 修正した按分率
※フランス、スペイン、ドイツ、
障害手当金の額の計算の特例の説明
通算による障害手当金の額は、厚生年金保険法第57条で規定する額に、按分率を乗じて計算します。
適用する按分率は次のようになります。
① 厚生年金保険法第57条本文の規定による額の場合
特例による障害厚生年金の額の計算に使用する按分率
② 厚生年金保険法第57条ただし書の規定による額の場合
特例による障害厚生年金の最低保障の按分率
発効日前の障害認定日時点で障害状態にあった者の障害基礎年金の支給に関する特例
この特例の対象者となるのは、初診日の時点で相手国期間を有し、障害認定日が協定の発効日前にある者が、次のいずれかに該当する場合です。
- 初診日時点で国民年金の被保険者
- 初診日時点で日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の者のうち、国民年金の被保険者だった者
- 初診日が相手国期間中にある者
そして次の全てを満たした場合に障害基礎年金が支給されます。
- 障害認定日時点で国民年金法第30条第2項の障害等級に該当する程度の障害状態にある。
- 国民年金の保険料納付済期間、又は免除期間を有する。
- 必要な納付要件(2/3要件)を満たす。
この規定による障害基礎年金は、障害認定日ではなく、協定の発効日の属する月の翌月から支給されます。
ゼロ円年金を避けるため、国民年金の保険料納付済期間、又は免除期間を有することを要件としています。(ゼロ円年金とは、協定により受給資格要件は満たすが、納付(免除)月数が0月のため年金額が0円になることをいいます。)
発効日前の障害認定日時点で障害状態にあった者の障害厚生年金の支給に関する特例
この特例の対象者となるのは、初診日時点で相手国期間を有し、障害認定日が協定の発行日前にある者が、次のいずれかに該当する場合です。
- 初診日時点で厚生年金保険の被保険者
- 初診日が相手国期間中にある者
そして、次の全てを満たした場合に障害厚生年金が支給されます。
- 障害認定日で厚生年金保険法第47条第2項の障害等級に該当する程度の障害状態にある。
- 厚生年金保険の被保険者期間を有する。
- 必要な納付要件(2/3要件)を満たす。
この規定による障害厚生年金は、障害認定日ではなく、協定の発効日の属する月の翌月から支給されます。
発効日前の障害程度を認定すべき日時点で障害状態にあった者の障害手当金の支給に関する特例
初診日時点で相手国期間を有し、障害程度を認定すべき日が協定の発効日前にある者が、次のいずれかにある場合に対象になります。
- 初診日時点で厚生年金保険の被保険者
- 初診日が相手国期間中にある者
対象者に該当し、次の全ての要件を満たした場合に障害手当金が支給されます。
- 障害程度を認定すべき日時点で厚生年金保険法第55条第1項で定める程度の障害状態にある。
- 厚生年金保険の被保険者期間を有する。
- 必要な納付要件(2/3要件)を満たす。
支払の遡及
受給権発生から5年経過後に請求された場合は、受給権は認められるが、遡及して支払われる年金は5年分となります。ただし、記録訂正に伴う時効特例法の適用、事務処理誤りや記録訂正により時効が援用されない場合もあります。
複数種別の被保険者であった期間を有する者に係る障害厚生年金・障害手当
相手国期間中に初診日のある傷病による障害を有する者が、複数種別の被保険者期間を有している場合は、障害厚生年金・障害手当金の事務を行う実施機関は次の通りとなります。
①すでに当該傷病以外に基づく受給権(先の障害厚生年金)を有している・・・当該受給権を有している年金に係る制度
②①に該当しない場合・・・障害認定日時点で加入していた制度
③①に該当せず、障害認定日時点で未加入だった場合・・・障害認定日の属する月以前の直近の制度
障害厚生年金の配偶者加給年金の額
通算により支給する障害厚生年金の配偶者加給年金の額は、定額に按分率を乗じて計算する。特例による障害年金及び遺族年金の、年金額・加入年金額・振替加算額等を算出する際に用いる按分率の計算方法は、協定国によって異なります。
海外在住者の20歳前障害年金
日本国内に住所を有しなくなった場合は、20歳前障害基礎年金の支給停止事由に該当するため、日本年金機構に届出が必要になります。(平成6年改正法附則第6条による障害基礎年金の場合も同じ。)
厚生年金と共済組合等の加入期間を有する場合
厚生年金と共済組合等のそれぞれの加入期間ごとに平均標準報酬月額・平均標準報酬額を計算し、加入期間ごとに計算した額を合算します。
合算した加入期間が300月に満たない場合は300月とみなして計算します。
計算方法は障害年金・障害手当金とも同様です。